公共交通機関の中でも便利な電車。鉄のレールの上を鉄の車輪で移動しています。
では、なぜ電車の車輪は滑らないのでしょうか。鉄と鉄であるため、滑りそうなものです。ゴムのタイヤではだめなのでしょうか?
また電車には車のようにハンドルがないのに、どうやってカーブを曲がっているのでしょうか?
電車の車輪の秘密について調べてみました。
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電車の車輪はなぜ滑らないの?
電車の『車輪』、実は滑っています。
とくにわかりやすいのは雨天時で、『車輪』が空回りしていると発射時に「ガクガク」と不規則な揺れがあります。
また、虫の大量発生や枯れ葉が原因で運行停止になることも珍しくないようです。
ですが、ブレーキが効かないわけではありません。
これは金属と金属がこすれる力、「摩擦力」に関係しています。
「摩擦力」といっても、ツルツルの金属と金属をこすっても滑りますよね?
例えば小銭やゲームセンターのコインとか…。
実はこの「摩擦力」、重さを加えることによって摩擦抵抗が大きくなるのです。
あの巨大な電車の重量が摩擦する部分に加わり、「摩擦力」を高めて発射や停止を行っているのです。
この「摩擦力」を使っている車両を『粘着式鉄道』といいます。
レールに『車輪』がくっつくという意味ではなく、粘着を摩擦という意味で使っていますね。
なぜ、わざわざ鉄を使って摩擦を起こしているのでしょう?
電車の車輪はなぜ鉄なの?ゴムのタイヤじゃダメなの?
ゴムタイヤが使えないわけではありません。
札幌の地下鉄にゴム製のタイヤが使われています。
ゴムタイヤは、鉄に比べて摩擦抵抗を高くできるため以下のようなメリットがあります。
・スリップを起こしにくい
・急加速・減速に対応しやすい
・勾配に強い
・騒音が少ない
素材がゴムのため、重量オーバーによりタイヤの変形が起きたり寿命が短いため取り替える頻度が多く、高コストになってしまうデメリットが大きいようです。
では、鉄と比べてみましょう。
鉄は以下のようなメリットがありました。
・生産・加工がしやすい
・丈夫で耐久性が高い
・比較的安く手に入る
・摩擦が少ないため、少しの力で重い荷物を運べる
・摩擦が少ないため、スピードが落ちにくい
デメリットは、騒音が大きい・勾配に弱いことです。
急な勾配だと滑って登れないことがあるため、歯車をつけた車両を繋がないといけません。
この車両を「ラック式鉄道」といいます。
2本のレールの真ん中に歯型のレールを設置し、車両側の歯車と噛み合わせることで登ったり下ったりするための鉄道です。
また、現在のレールと『車輪』は、材質が鉄から鉄合金(炭素鋼)というものに改良されました。
耐摩耗性、腐食性、耐接触疲労性、溶接性が格段に優れ、鉄道会社や路線ごとに成分が異なった材質を使い分けているそうです。
ゴムに比べると、鉄は低コストで長期的にみても維持しやすいよう考えられていますね。
メンテナンスがしやすく丈夫で壊れにくい、つまり効率よく長く使えるものが優先されたということでしょうかね。
電車の車輪が空転することがあるのはなぜ?雨が降ると影響がでる?
空転とは、『車輪』が空回りして『車輪』一周分の距離を進まなくなることをいいます。
「スリップ」と呼ばれることもあります。
電車の『車輪』における空転とは、「電車の車輪はなぜ滑らないの?」でも少しお話したとおり、落ち葉による原因が多数を占めています。
もちろん雨もその原因の一つです。
レールについた落ち葉が『車輪』で潰されると、葉に含まれる「タンニン」という成分とレールの鉄が反応し、黒い皮膜が作り出されます。
雨や朝露の水分が、その皮膜を湿った状態にすることにより滑りやすくなってしまい空転が起きてしまいます。
車輪空転による遅延は、これが原因だったんですね。
現在ではこの車輪空転を減らすため、『車輪』が滑るのを事前に察知して、速度を調整する機能をつけたようです。
電車はどのくらいの雨で止まる?
電車は、雨量は毎時45ミリ、風は秒速25メートル以上が基準になっているようです。
また、山間部の土砂崩れが起きやすい地域だったり、沿岸部の波が高い地域によって若干変動があります。
また、積雪対策がされていない地域で電車が止まることも稀にあります。
原因としては、
・除雪や融雪するための費用がない
・除雪する時間がない
「運休」や「運転見合わせ」の★ちょっと豆知識★
・運休 ~ 運転自体をやめて再開も行われない状態。
・運転見合わせ ~ 運転を再開する見通しが立つまで待機状態。
・終日運転見合わせ ~ 「終日」とは朝から晩までの1日中を指します。
・順次運転見合わせ ~ 次から次へ順を追ってという意味合い。
モノレールが普及しない理由や、電車との違いについての記事はこちら↓

電車のレールに隙間があるのはなぜ?
それは鉄の性質が関係しています。
鉄は頑丈で耐久性はありますが、温度によって変形する性質をもちます。
鉄は熱すると伸び、冷やすと縮む特性があるため、レールの継ぎ目に敢えて隙間を作り、気温の影響で伸びたり縮んだりしてもゆがまないようになっているのです。
この隙間は地方によって調整されていて、夏にあまり暑くならない北海道では間隔が少し狭めのようです。
でもここ数年の北海道も、最高気温30度超えは珍しくないので、気温に合わせて調整するのも大変でしょうね。
東海道新幹線がなぜバラスト軌道(線路のまわりに石が置いてある)のままなのかについての記事はこちら↓

電車が走るとガタンゴトンと音がするのはなぜ?
レールの継ぎ目を電車が通過するとき、「ガタンゴトン」という音が鳴ります。
先程お話したように、レールは鉄で作ることにより、気温によって伸びたり縮んだりするため、レールの継ぎ目に隙間をあけて調整できるようにしていますね。
一般的に車両の長さが約20mで、レールの長さが25mとなっているため、隙間のある継ぎ目を通過した時に一定のリズムで音が聞こえてくるわけです。
ちなみに、この25mのレールを「定尺レール」といいます。
しかし、最近「ガタンゴトン」という音を聞かなくなったという声が寄せられています。
調べたところ、どうやらレールを長くしているということがわかりました。
設置場所によって長さも変わるようで、25m以上、200m未満の「長尺レール」、200m以上の「ロングレール」を使うようになったそうです。
長いレールを使うことにより、次のようなメリットがあります。
・継ぎ目が減ることにより、音と揺れが減って乗り心地が良くなる
・沿線の騒音が少なくなる
・継ぎ目のメンテナンス回数が減る
ですが、気温のせいで伸び縮みする問題は大丈夫なのでしょうか?
レールに関する研究が進み、なんと…!
レールが延びるのは先端のみであり、レールの長さと伸びる長さは関係ないのだとか…。
このような結果から、ロングレールが実用化されるようになり「ガタンゴトン」という音は減ってきているそうです。

電車の車輪の大きさはどれくらい?
車輪の大きさは様々で、一番多く使われている直径は860mmです。
その他に、1120mm~610mmまで車両によって異なります。
車輪の直径 | 主な車両 |
1120mm | 電気機関車など |
910mm | 国鉄103系(DT33)、JR貨物DF200形、小田急500形(M台車)など |
860mm | 大多数の車両 |
840mm | 湘南電気鉄道デ1形 |
810mm | JR東日本721系、JR九州813系、JR北海道789系など。低床車 |
762mm | 阪神5101形・5201形、NDC第一世代、小田急5000形(T台車)など |
660mm | 路面電車、横浜市交1000形などのリニアモーター車両、京坂800形など |
610mm | 都営大江戸線などのリニアモーター車両、JR貨物クサ1000形など |
車輪はメンテナンスのときに、傷や歪みがあると削って修正をします。
これを「転削」といいます。
一般的に一回で10~20mm削るため、車体の高さが変わらないように台車に板をかませるなどをして高さを調整しています。
そのため、車輪径が小さくなっても走行に大きく影響はしないようです。
電車の車輪でカーブってなぜ曲がれる?フランジがあるから?
電車はハンドルがないのになぜカーブを曲がることができるのでしょうか?
電車がカーブを曲がれるのは、車輪に「フランジ」という出っ張りがあり、カーブを曲がる時にレールにガイドされているような状態になります。
もう一つ重要な仕組みが車輪の形にあります。車輪が「円すい」の形をしているのでカーブを曲がれるのです。
少し説明が難しく、言葉だとわかりにくいので簡単でわかりやすい動画を見つけたのでご紹介します。
こちらのユーチューブの説明が一番わかりやすいで。すごく詳しく説明されているので興味がある方は見てくださいね。
電車の車輪はなぜ滑らない?ゴムのタイヤじゃダメな訳とは?のまとめ
ここまで、電車の車輪がなぜ滑らないのかについて見てきました。
・電車の車輪はすべらないわけではない
・電車の車輪が鉄である理由は摩擦が少ないから
・変形しやすいためゴムではダメ
・鉄は伸縮する性質を持つためレールには隙間がある

鉄のレールと鉄の車輪でどうやって電車が走っているのか気になったことがある人は少なくないでしょう。
ネット上でも質問している人が見られました。
どうやって走っているのか知っていれば電車に乗るのも楽しくなりますね。
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